【線形代数学講義】行列式と余因子展開

線形代数

線形代数で必要となる演算に
行列式があります。
この行列式を理解するうえで
必要な「置換」「互換」について
まずは説明をします。

「置換」や「互換」の説明を省くため、
3次以下の行列式に限定したり、
また4次以上でも余因子展開で3次の行列式にしてから
計算するということも可能です。

しかしそれはただの暗記になってしまいます。
理屈もストーリーもなくだたやみくもに
覚えるだけではなんの「理解」にもなりません。

中学生に
二次方程式の解の公式や
球や錐体の体積の公式を
とくかく、暗記しろ
と言われて
納得がいかない
という反応をされてしまいます。

置換や互換のところは
群論の範囲となりますが
4次以上の行列式の
一般的な定義とその理解をする上で
避けて通ることができないところです。

一つ救いがあるのは
置換や互換は難しい話ではない
ということです。
群論のような深い話まで入らないので
一度、理解できれば
行列式の一般的な定義を見ても
面食らうことは少なくなります。

当方の学習した内容を
理解し伝えることを目的としていますが
説明に脆弱な点や
表記に誤記がある場合がございますので
あらかじめご了承ください。
随時、修正していきます。

どうしても気になる場合は
フォームから
「優しく」ご指摘いただければ
助かります。

参考・引用文献

下記の資料を中心に執筆しています。
各所で引用元を記すべきですが
煩雑になるのを防ぐため
こちらでまとめて明示いたします。

書籍

  • 改訂版 大学1・2年生のためのすぐわかる数学
  • これだけ! 線形代数
  • まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数
  • 線型代数―Linear Algebra(長谷川 浩司/著)
  • 線型代数入門( 斎藤 正彦/著)

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

動画

  • 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
  • Masaki Koga [数学解説]
  • AKITOの勉強チャンネル
  • 式変形チャンネル

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

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線形代数学講義

行列式

置換

 

定義
集合\(\{ 1,2, \cdots , n\}\)から\(\{ 1,2, \cdots , n\}\)への
全単射写像\(\sigma\)を置換という。

1から\(n\)までの数をある1から\(n\)までの数に変換する写像を定義しています。
1から\(n\)までの数を並べ替えるのと同じことです。

n次の置換の数は\(n!\)となる。
次元が増えるにつれて爆発的に増加します。

定義
置換\(\sigma\)について
1の置換後の値を\(\sigma (1)\)
\(\vdots\)
\(n\)の置換後の値を\(\sigma (n)\)
のとき
置換\(\sigma\)を次のように表記する。
\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & \cdots & n \\
\sigma(1) & \sigma(2) & \cdots & \sigma(n) \\
\end{pmatrix} \)
また
\(i \to j \to k \to i\)というように循環する置換
(その他の値はそのまま)の場合
\(\begin{pmatrix}i & j & k \end{pmatrix} \)と書く。
この表記をサイクル表示という。\(n\)次の置換全体の集合を\(S_n\)と表す。

例えばこのように表記される。
\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
3 & 2 & 1 & 5 & 6 & 4
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
1 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
4 & 5 & 6
\end{pmatrix} \)

定義
\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & \cdots & n \\
1 & 2 & \cdots & n
\end{pmatrix} \)
のような何も値が変わらない置換を恒等置換と呼び
\({\rm id}\)と書く。\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & \cdots & n \\
a_1 & a_2 & \cdots & a_n
\end{pmatrix} \)に対し
\(\sigma = \begin{pmatrix}
a_1 & a_2 & \cdots & a_n \\
1 & 2 & \cdots & n
\end{pmatrix} \)を逆置換という。置換写像の合成(積)について
\(\sigma \circ \tau =\sigma \tau \)と表す。

ただしある自然数において合成写像の値は
\(\sigma \tau (i) = \sigma( \tau (i))\)というように
右から変換することに注意する。

例えば
\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
3 & 2 & 1 & 5 & 6 & 4
\end{pmatrix}\)
この逆置換は
\(\sigma^{-1} = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
3 & 2 & 1 & 6 & 4 & 5
\end{pmatrix}\)
となる。

\(\tau = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
4 & 6 & 2 & 3 & 1 & 5
\end{pmatrix}\)のとき
\(\sigma\tau = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
5 & 4 & 2 & 1 & 3 & 6
\end{pmatrix}\)となる。
\(\tau\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
2 & 6 & 4 & 1 & 5 & 3
\end{pmatrix}\)となるので
交換法則は成り立たない。

置換の法則

  1. \((\sigma\tau)\rho=\sigma(\tau\rho)\)
  2. \({\rm id}\:\sigma=\sigma\:{\rm id}=\sigma\)
  3. \(\sigma\sigma^{-1}=\sigma^{-1}\sigma={\rm id}\)
  4. \((\sigma\tau)^{-1}=\tau^{-1}\sigma^{-1}\)

 

定義
置換のうち2つの値を入れ替える置換を「互換」と呼ぶ。

 

定理
任意の置換は互換の積で表現できる。

ただし互換の積で表現できるのは一通りとは限りません。
つまり一意ではないです。

例えば1つの置換で
下記のようになります。

\(\sigma = \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
2 & 6 & 4 & 1 & 5 & 3
\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}
1 & 2 & 6 & 3 & 4
\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}
1 & 2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 6
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 4
\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}
1 & 4
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
3 & 4
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
3 & 6
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
2 & 6
\end{pmatrix}
\)

定理
ある置換を互換の積で表すとき
互換の積の個数の偶奇は一定である。

 

定義
置換\(\sigma\)の符号\({\rm sgn} \sigma\)を次のように定義する。
互換の積の個数が
\({\rm sgn} \sigma = (\begin{cases}
+1 & 偶数の時\\
-1 & 奇数の時
\end{cases}\)積の個数が偶数となる置換を偶置換
奇数となる置換を奇置換と呼ぶ。
線形代数のEssence 09-1.置換の定義

行列式の定義

定義
n次正方行列\(A=(a_{ij})\)ついて
行列式\(|A|\)を下記のように定義する。
$$|A|\buildrel \rm def \over {:=} \displaystyle\sum_{\sigma\in S_n}{\rm sgn} \sigma\cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}\cdots a_{n,\sigma(n)}$$

また\(|A|\)は

$$|A|={\rm det}A =\begin{vmatrix}
a_{11} & \cdots & a_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
a_{n1} &\cdots & a_{nn}
\end{vmatrix}$$

という表記もします。

\(\begin{vmatrix}
a_{11} & \cdots & a_{1n}\\
\vdots & \ddots & \vdots\\
a_{m1} &\cdots & a_{mn}
\end{vmatrix}\)

のうち、
1つの列から1つの成分を選択
全ての列で1つの成分を選択して
その積を作る。
それに置換の符号を掛ける。

\(S_n\)の全体について
つまり\(n!\)個の和を計算する。

\(\begin{vmatrix}
a_{11} & a_{12} & a_{13}\\
a_{21} & a_{22} & a_{23}\\
a_{31} & a_{32} & a_{33}
\end{vmatrix}\)
について

置換を全て並べます。

\(S_3 :
偶置換となるのは
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
1 & 2 & 3
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 3 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
3 & 1 & 2
\end{pmatrix}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
1 & 2 & 3
\end{pmatrix} \Rightarrow +1 \cdot a_{11}a_{22}a_{33}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 3 & 1
\end{pmatrix} \Rightarrow +1 \cdot a_{12}a_{23}a_{31}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
3 & 1 & 2
\end{pmatrix} \Rightarrow +1 \cdot a_{13}a_{21}a_{32}\)

\(奇置換となるのは
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 1 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 1
\end{pmatrix}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{pmatrix} \Rightarrow -1 \cdot a_{11}a_{23}a_{32}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
2 & 1 & 3
\end{pmatrix} \Rightarrow -1 \cdot a_{12}a_{21}a_{33}\)

\(\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 1
\end{pmatrix} \Rightarrow -1 \cdot a_{13}a_{22}a_{31}\)

これら6個の項を足し合わせる

\(\begin{vmatrix}
a_{11} & a_{12} & a_{13}\\
a_{21} & a_{22} & a_{23}\\
a_{31} & a_{32} & a_{33}
\end{vmatrix} = +1 \cdot a_{11}a_{22}a_{33} +1 \cdot a_{12}a_{23}a_{31}\\
+1 \cdot a_{13}a_{21}a_{32} -1 \cdot a_{11}a_{23}a_{32}\\
-1 \cdot a_{12}a_{21}a_{33}-1 \cdot a_{13}a_{22}a_{31}\)

このようにして行列式が求められる。
ただし次数が増えていくと
爆発的に項数が増えていく。

2次元の幾何ベクトル空間の場合
\(|A|=a_{11}a_{22}- a_{21}a_{12}\)となる。
これはベクトルの基底の変換、
座標の返還において新しい基底の単位ベクトルで
作られる平行四辺形の面積になる。

イメージ的には
線形変換の伸縮具合がわかる。
空間全体を引き伸ばしているのか
押し込んでいるのか。

Masaki Koga [数学解説]さんの下記の動画が
行列式の定義がかなり分かりやすい
というかかみ砕いて説明しています。
(2次と3次の場合の行列式を説明し、
すぐに余因子展開に移ってしまう
という説明がありますが、
下記の動画は
定義式に沿って、置換を交えて
行列式の計算する手順を示しているので
定義式の意味がわかり、かなり丁寧です。

線形代数のEssence 10.行列式の定義

\(A,B\)を正方行列、\(C\)を行列とすると
\(\begin{vmatrix}
A & C \\
O & B
\end{vmatrix} = |A||B|\)

 

定理
\(A,B\)を\(n\)次正方行列とすると
\(|AB| = |A||B|\)
定理
行列\(A\)正則行列\(\Leftrightarrow |A| \neq 0\)

行列式の基本法則

行列式の法則

  1. 行列Aのある一行(またはある一列)を\(k\)倍して作った行列をBとすると
    $$|B|= k|A|$$
  2. 行列Aのある行と行(またはある列と列)を入れ替えた行列をBとすると
    $$|B|= -|A|$$
  3. 行列Aのある行と行(またはある列と列)の成分が等しいと
    $$|A|= O$$
  4. 行列A,B,Cのある\(k\)行(または列)の成分が\(a_{kj}+b_{kj} = c_{kj} \)となり
    かつ、それ以外の成分が全て等しいとき
    $$|A|+|B|= |C|$$
  5. 行列Aのある行を他の行(ある列を他の列)のスカラー倍を足した行列をBとすると
    $$|B|= |A|$$
  6. $$|{}^tA| = |A|$$
  7. $$|AB| = |A|\cdot |B|$$

行基本変形による行列式の性質

  1. 行と行を入れ替える ⇒ 行列式は-1倍になる
  2. 1つの行を\(c\)倍する ⇒ 行列式は\(c\)倍になる
  3. 1つの行を\(c\)倍して他の行に足す ⇒ 行列式は変わらない

列基本変形による行列式の性質

  1. 列と列を入れ替える ⇒ 行列式は-1倍になる
  2. 1つの列を\(c\)倍する ⇒ 行列式は\(c\)倍になる
  3. 1つの列を\(c\)倍して他の行に足す ⇒ 行列式は変わらない

行列式の計算はまず0という成分があるかに着目する。
さらに基本変形で
0という成分を作れるか
もしくは行、列が定数倍になっているか
を考えます。

これをすることで計算がぐっと楽になる上に
ミスも防げます。

行列式の展開

行列式を計算するときに
各行から一つずつ列が
重ならないように成分を選択していきます。
そこである成分を選んだあと
選ばれることがない、その成分と同じ行と列を
省いた行列を考えます。
その行列の行列式を計算することで
もとの求めたい行列式の計算ができます。
そのために定義されたのが余因子であり
超列式を計算するのが余因子展開です。

大きな次数の行列式も
計算ができるようになります。

余因子の定義

定義
\(n\)次の行列式\(|A|\)から\(i\)行と\(i\)列を
取り除いて得られる\((n-1)\)次の行列式\(D_{ij}\)を
行列式\(|A|\)の\((i,j)\)成分の小行列式という。\(A_{ij}=(-1)^{i+j}D_{ij}\)を
\(|A|\)の\((i,j)\)成分の余因子という。

\((-1)^{i+j}\)を掛けているのは
選んだ成分を左上に持ってくるまでに
行、もしくは列の交換に要した回数が\(i+j\)回となります。
行列式の符号も考慮すると\((-1)^{i+j}\)を掛ける必要があります。
これをかけ合わせることで
余因子展開した式がスッキリと表現できます。

余因子展開

命題
\(n\)次の行列式\(|A|=|a_{ij}|\)の
\((i,j)\)成分の余因子を\(A_{ij}\)とすると、
次の式が成り立つ。\(i\)行による展開
$$|A|=a_{i1}A_{i1}+a_{i2}A_{i2}+\cdots +a_{in}A_{in}$$\(j\)列による展開
$$|A|=a_{1j}A_{1j}+a_{2j}A_{2j}+\cdots +a_{nj}A_{nj}$$

余因子行列で逆行列を求める

定義
\(n\)次の正方行列\(A=(a_{ij}\)の
\((i,j)\)成分の余因子を\(A_{ij}\)とするとき
$$ \tilde{A}={}^t
\begin{pmatrix}
A_{11} & \cdots & A_{1n} \\
\vdots & \ddots & \vdots\\
A_{n1} & \cdots & A_{nn}
\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}
A_{11} & \cdots & A_{n1} \\
\vdots & \ddots & \vdots\\
A_{1n} & \cdots & A_{nn}
\end{pmatrix}\\
$$
を行列Aの余因子行列と呼ぶ。

余因子の成分の並びが転置されていることに
注意が必要です。

定理
このとき\(A \tilde{A}=\tilde{A}A=|A|E\)となる。
つまり$$A^{-1}= \frac{\tilde{A}}{|A|}$$

\(|A|\)が正則行列\(\Leftrightarrow |A|\neq 0\)\)

\(n\)次正方行列の余因子行列は
実際に求めようとすると
成分の個数\(n^2\)個の行列式を計算するので
計算量が膨大になる。
余因子で逆行列を求めるなら
もう少し工夫が必要となる。

定理
(クラメルの公式)
行列\(A\)が\(n\)次正方行列、
\({\bf{b}}\)を\(n\)次列ベクトルとする。
このとき\(A {\bf{x}}={\bf{b}}\)
の解 \({\bf{x}}={}^t(x_1,\cdots ,x_n)\)は
$$x_i = \frac{\rm{det} ({\bf{a_1}}, \cdots ,{\bf{a_{i-1}}}, {\bf{b}},{\bf{a_{i+1}}}, \cdots ,{\bf{a_n}})}{\rm{det}( {\bf{a_1}}, \cdots , {\bf{a_n}})}$$

\(\begin{cases}
2x + y = 1 \\
x+y =0
\end{cases}\)

このときクラメルの公式を用いると

$$x = \frac{\begin{vmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
2 & 1\\
1 & 1
\end{vmatrix}} = 1,
y = \frac{\begin{vmatrix}
2 & 1\\
1 & 0
\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
2 & 1\\
1 & 1
\end{vmatrix}} = -1$$

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