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三角関数の入試問題
問題
$$\tan 1^\circは有理数か?$$

めっちゃシンプルな問題文

\(\tan 1^{\circ}\)なんて考えたこともない
自力で解く
この手の問題は背理法かと…
まずこの問題をみてどのように手をつけようか…
一瞬戸惑いそうだが次のような見当を立ててみた。
「何かを示せ」と言われた場合、
- それが、とてつもなく抽象的なこと
- 膨大な範囲に及ぶこと
- そうだと言い切っていいのだろうかと迷うようなこと
このような場合は
背理法で、矛盾を導いて”証明終”
というパターンが多いように感じます。
今回も\(\tan 1^\circ\)という
非常に扱いにくい素材が出されています。
これをどのように料理すれば、見えてくるのか。
ここからは当てを付けたうえで試行錯誤してみました。
tanの性質を振り返ってみた
まずは、いきなり\(1^\circ\)という角度を扱うのではなく、
親しみのある30°、45°、60°
という角度について振り返ってみました
$$\tan 30^\circ = \frac{1}{\sqrt{3}}\\
\tan 45^\circ = 1\\
\tan 60^\circ = \sqrt{3}$$

有理数となるのは45°のときだけ…
よく考えれば、キリのいい角度の時に
2辺が整数比になる方が珍しい…

何となくtan1°は
やっぱり無理数のような気がする…
\(1^\circ\)という数字では扱えないので、
何とか30°、45°、60°という
数字と結び付けられないか、
考えてみる。
tanの加法定理について振り返ってみる。
$$\tan{(\alpha + \beta)}=\frac{\tan\alpha +\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}$$
$$\tan2\theta =\frac{2\tan\theta}{1-\tan^2 \theta}$$
$$30 = 2 \times 3\times 5\\
45 = 3^2 \times 5\\
60= 2^2\times 3\times 5$$
倍角の公式を使えば、なんとかいけそうかも
という感触がよぎりました。
$$\tan3\theta=\tan(2\theta +\theta)=\frac{\tan2\theta+\tan\theta}{1-\tan2 \theta\tan\theta}$$
$$\tan4\theta=\tan(2\theta \times 2)=\frac{2\tan2\theta}{1-\tan^2 2\theta}$$
$$\tan5\theta=\tan(4\theta +\theta)=\frac{\tan4\theta+\tan\theta}{1-\tan4 \theta\tan\theta}$$

これでいけるんじゃないか
どうやら材料はそろったようなので、
証明に入ります。
証明
ある\(\theta\)において\(\tan \theta\)を有理数とする。
$$すると\tan \theta = \frac{n}{m}(m,nは整数,m\neq 0)と表すことができる。$$
このとき、
$$\tan 2\theta =\frac{2\tan\theta}{1-\tan^2 \theta}より$$
$$\tan \thetaが有理数ならば\tan 2\theta は有理数となる。(①)$$
同様に
$$\tan 3\theta=\tan(2\theta +\theta)=\frac{\tan2\theta+\tan\theta}{1-\tan2 \theta\tan\theta}より$$
$$\tan \thetaが有理数ならば\tan 3\theta は有理数となる。(②)$$
同様に
$$\tan4\theta=\tan(2\theta \times 2)=\frac{2\tan2\theta}{1-\tan^2 2\theta}より$$
$$\tan \thetaが有理数ならば\tan 4\theta は有理数となる。(③)$$
$$\tan5\theta=\tan(4\theta +\theta)=\frac{\tan4\theta+\tan\theta}{1-\tan4 \theta\tan\theta}$$
$$\tan \thetaが有理数ならば\tan 5\theta は有理数となる。(④)$$
よって、①、②、③、④、および
$$\tan 30\theta = \tan 2\times 3\times 5 \times \thetaより$$
$$\tan \thetaが有理数ならば\tan 30\theta は有理数となる。(⑤)$$
ここで、tan1°を有理数と仮定する。
この時、⑤から
$$\tan 1^\circが有理数ならば\tan 30^\circ は有理数となる。$$
$$しかし、\tan 30^\circ=\frac{1}{\sqrt{3}}であり矛盾となる。$$
よってtan1°は無理数であることが示された。
(証明終)
あってんのかな…
多分これで大丈夫だと思う。
有理数同士をいくら四則演算しても有理数なので、
証明の穴はないと思われるが。
この問題を試行錯誤したメモはこちら
解答
貫太郎さんとほぼ同じ解き方でした。
背理法で有理数と仮定して倍角の公式から
\(\tan 64^\circ ,\tan 4^\circ\)を有理数となり、
加法定理から\(tan (64-4)^\circ\)の値が
有理数となってしまうことから
矛盾を導き出していました。
この問題の感想とポイント
- \(\tan\)の既知の値と\(\tan 1^\circ\)をどう結び付けるか?
- \(\tan\)の倍角公式でうまく使えそうか、また見当がつけられるか?
- 何でもいいからとりあえず手を付けてみる
- 道筋が見えなくても、わかることを書き並べてたら、
点と点がつながる瞬間がある - 小さな行動を積み重ねたことで、
最初は全く見当もつかなった道筋を
見つけることができた
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とっても面白かったので動画の冒頭で紹介した本です。学問に対して向き合う姿勢を学べる本。キリン解剖記 https://t.co/HEYj4ozvyj@AnatomyGiraffe 千葉大 n次方程式の整数解 https://t.co/lEFsiqXxJk
— 鈴木貫太郎 (@Kantaro196611) September 22, 2020
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