線形代数

行列の基本変形とrank(階数)【多元連立一次方程式の解】【線形代数学】

線形代数

線形代数をやる上で、必ずやる作業が基本変形。
はじめて行列を定義する利便性が分かる。
行列式の値や逆行列を求められ、
多次元の連立方程式の解を求めることも機械的な作業で出来る。
つまりプログラムで多元連立一次方程式が解けるようになる。
そして逆行列を求める上で理解が必須となるrannk。
この行列のrankの値を基本変形で求めていく。

  • ご覧いただく前のご注意点

当方の学習した内容を
理解しまとめることを目的としています。
説明に脆弱な点や
表記に誤記がある場合がございますので
あらかじめご了承ください。
発見次第、そのうち、修正していきます。

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行列の基本変形

行列の基本変形

行基本変形(左基本変形)

  1. 行と行を入れ替える
  2. 1つの行を\(c(\neq 0)\)倍する
  3. 1つの行を\(c\)倍して他の行に足す

列基本変形(右基本変形)

  1. 列と列を入れ替える
  2. 1つの列を\(c(\neq 0)\)倍する
  3. 1つの列を\(c\)倍して他の行に足す

この基本変形は
中学数学で習った連立二元方程式の解を求めるときに
加減法で式を足したり引いたりしたが
全く同じことをやっている。

命題
行列の左基本変形(右基本変形)は、
ある正則行列を左(右)から掛けることで実現できる。

\(i\)行(列)と\(j\)行(列)を入れ替える行列は次のようになる。

\(A_1=\begin{pmatrix}
1 &  & & & & & & & \\
& 1 & & & & & & & \\
&   & \ddots & & & & & & \\
&  &  & 0 & \cdots & 1 & & & \\
&  &  & \vdots  &  & \vdots & & & \\
&  &  & 1 & \cdots & 0 & &  & \\
&   &  &  &  &  &\ddots & & \\
&  &  &  &  &  & & 1 &  \\
&  &  &  &  &  & &  & 1
\end{pmatrix} \)

簡単に言い換えると
単位行列の\(i\)行(列)目と\(j\)行(列)目を
交換した行列である。
これを左(右)から掛ければ\(i\)行(列)目と\(j\)行(列)目が
入れ替わる。

\(i\)行(列)を\(c\)倍する行列は次のようになる。

\(A_2=\begin{pmatrix}
1 &  &  &  &  &  &   \\
& 1 &  &  &  &  &   \\
&  & \ddots &  &  &  & \\
&  &  & c  &  &   &  \\
&  &  &  & \ddots  &  & \\
&  &  &  &  & 1 &  \\
&  &  &  &  &  & 1
\end{pmatrix} \)

単位行列の
第\(ii\)成分を\(c\)に書き換える行列になる。

\(i\)行(列)の\(c\)倍を\(j\)行(列)を加える行列は次のようになる。

\(A_3=\begin{pmatrix}
1 &  &  &  &  &  &  &  & \\
& 1 &  &  &  &  &  &  &  \\
&   & \ddots &  &  &  &  &  & \\
&  &  & 1 & \cdots & 0 & & & \\
&  &  & \vdots  &  & \vdots &  & &\\
&  &  & c & \cdots & 1 &  &  & \\
&   &  &  &  &  &\ddots  &  & \\
&  &  &  &  &  & & 1 &  \\
&  &  &  &  &  & &  & 1
\end{pmatrix} \)

単位行列の\(j,i\)成分を\(c\)にした行列です。

これら\(A_1,A_2,A_3\)を基本行列とする。
これらの基本行列は全て正則行列となっている。

定理
任意の行列は基本変形(掃き出し)を
繰り返すことで、下記のような行列に
変形できる。
\(A=\begin{pmatrix}
1 &  &  &  &  &  &   \\
& 1 &  &  &  & 0 &   \\
&  & \ddots &  &  &  & \\
&  &  & 1  &  &   &  \\
&  &  &  &   &  & \\
&  & 0 &  &  & 0 &  \\
&  &  &  &  &  &
\end{pmatrix} \\
=\begin{pmatrix}
E_r & O\\
O & O
\end{pmatrix} \\
\)

行基本変形は左から
列基本変形は右から
正則である基本行列をかけることを意味する。

よってこれらの基本行列をかけることで
と行列を変形させていく。
例えば\(Ax=b\)の両辺に左から
基本行列をかけることで
\(E_n x=b’\)となり
ベクトル\(x\)の値を求めることができる。

行列のrank(階数)

定理
行列Aに基本変形を繰り返した行列A’が
\(\begin{pmatrix}
E_r & O\\
O & O
\end{pmatrix} \)
となったときに
1の並ぶ個数\(r\)は
行列Aにのみ依存し、
基本変形の仕方には影響しない。

行列の成分によって
1が並ぶ個数は一通りに決まります。

定義
行列\(A\)に基本変形を繰り返した行列\(A’\)が
\(A’=\begin{pmatrix}
E_{r} & O \\
O & O
\end{pmatrix} \)
(\(E_r\)を\(r\)次の単位行列、\(O\)を零行列)
のときAのrank(階数)といい\( {\rm rank} A=r\)と表す。
補題
\(n\)次正方行列\(F_r(r < n)\)は正則ではない。\(F_r=\begin{pmatrix}
E_{r} & O \\
O & O
\end{pmatrix} \)
定理
行列\(A\)を\(n\)次正方行列とする。
\(A\)が正則\(\Leftrightarrow {\rm rank} A =n\)

つまり行列\(A\)を基本変形して
単位行列\(E_n\)になったとき
\(A\)は逆行列をもつ。


\(A\)が\(n\)次正則行列ならば
左基本変形のみで
単位行列\(E_n\)に変形できる。
 
定理
行列は左基本変形のみによって次の形に変更できる。
この行列を階段行列、または簡約行列という。
(*は任意の成分、空欄は0)
\(\begin{pmatrix}
1 & * & * & * & * & * & *  \\
&  & 1 & * & * & * & *  \\
&  & \ddots &  &  &  & \\
&  &  & 1  & * & *  & * \\
&  &  &  &  &  & \\
&  &  &0  &  &  &  \\
&  &  &  &  &  &
\end{pmatrix} \\\)
1が並ぶ個数がこの行列の\(\rm rank\)となる

*の部分は行基本変形で0にすることができるので
\(\rm rank\)を求めるだけなら
階段行列の形にすればよい。

\(\rm rank\)の求め方

\(A=\begin{pmatrix}
1 & 5 & 8 & -1 \\
1 & 7 & 14 & -3 \\
2 & 7 & 7 & 2
\end{pmatrix} \)

まず1列目を1 0 0という形にします。

2行目に1行目を引きます。
3行目に1行目×2を引きます。

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 5 & 8 & -1 \\
0 & 2 & 6 & -2 \\
0 & -3 & -9 & 4
\end{pmatrix} \)

次に2列目を* 1 0という形にします。

2行目を2で割ります。

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 5 & 8 & -1 \\
0 & 1 & 3 & -1 \\
0 & -3 & -9 & 4
\end{pmatrix} \)

3行目に2行目×3を足します。

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 5 & 8 & -1 \\
0 & 1 & 3 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \)

これで階段行列が完成しました。

ということで\({\rm rank} A = 3\)となります。

rankを求めるだけなら
左上の成分を単位行列まで
基本変形する必要はないです。

計算は楽に行いましょう。

\(A=\begin{pmatrix}
0 & 2 & 3 & 3 \\
-2 & 0 & 5 & 9 \\
1 & 3 & 2 & 0 \\
1 & 1 & -1 & -3
\end{pmatrix} \)

まず1列目を1 0 0 0という形にします。

1行目と4行目を交換します。

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 1 & -1 & -3\\
-2 & 0 & 5 & 9 \\
1 & 3 & 2 & 0 \\
0 & 2 & 3 & 3
\end{pmatrix} \)

2行目+1行目×2
3行目-1行目
を計算

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 1 & -1 & -3\\
0 & 2 & 3 & 3 \\
0 & 2 & 3 & 3 \\
0 & 2 & 3 & 3
\end{pmatrix} \)

3行目-2行目
4行目-2行目
を計算

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 1 & -1 & -3\\
0 & 2 & 3 & 3 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0
\end{pmatrix} \)

よって\({\rm rank} A = 2\)

掃き出し法で逆行列を求める

左基本変形で逆行列を求めることができる。

行列\(A\)に基本行列\(P\)を左から掛けると\(E_n\)となる。

$$PA = E_n$$

このとき行列\(\begin{pmatrix}A & E_n\end{pmatrix}\)に\(P\)を左から掛けると
\(P\begin{pmatrix}A & E_n\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}PA & P\end{pmatrix}  = \begin{pmatrix}E_n & P\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}E_n & A^{-1}\end{pmatrix} \)
となる。

実際に逆行列を求めてみる。

\(\begin{pmatrix}
2 & 3 & 2 & 1\\
4 & 2 & -1 & 1 \\
-2 & -1 & -1 & -2 \\
2 & 1 & 2 & 3
\end{pmatrix} \)

この逆行列を計算する。

\(\begin{pmatrix}
2 & 3 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0\\
4 & 2 & -1 & 1 &0 & 1 & 0 & 0 \\
-2 & -1 & -1 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
2 & 1 & 2 & 3 & 0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
2 & 3 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0\\
0 & -4 & -5 & -1 & -2 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 2 & 1 & -1 & 1 & 0 & 1 & 0 \\
0 & -2 & 0 & 2 & -1 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
2 & 3 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0\\
0 & -2 & 0 & 2 & -1 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & -5 & -5 & -1 & 1 & 0 & -2 \\
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
2 & 3 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0\\
0 & -2 & 0 & 2 & -1 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 1 & 5 & 3
\end{pmatrix} \)

左半分が正則でなかったので逆行列は持たない。

\(\begin{pmatrix}
2 & 1 & 1 & 1\\
3 & 0 & -2 & 1 \\
0 & -1 & 0 & -2 \\
3 & 1 & 1 & 1
\end{pmatrix} \)

この逆行列を計算する。

\(\begin{pmatrix}
2 & 1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0\\
3 & 0 & -2 & 1 &0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
3 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & -1\\
3 & 0 & -2 & 1 &0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & -1 & 0 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
3 & 1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & -1\\
0 & 0 & -2 & 1 &3 & 1 & 0 & -3 \\
0 & -1 & 0 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 1 & 1 & 1 & 3 & 0 & 0 & -2
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & -1\\
0 & -1 & 0 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & -2 & 1 &3 & 1 & 0 & -3 \\
0 & 1 & 1 & 1 & 3 & 0 & 0 & -2
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & -1\\
0 & -1 & 0 & -2 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & -2 & 1 &3 & 1 & 0 & -3 \\
0 & 0 & 1 & -1 & 3 & 0 & 1 & -2
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0 & 2 & 0 & 0 & -1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & -1 & 9 & 1 & 2 & -7 \\
0 & 0 & 1 & -1 & 3 & 0 & 1 & -2
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0 & 2 & 0 & 0 & -1 & 0 \\
0 & 0 & 1 & -1 & 3 & 0 & 1 & -2\\
0 & 0 & 0 & -1 & 9 & 1 & 2 & -7
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0 & 2 & 0 & 0 & -1 & 0 \\
0 & 0 & 1 & -1 & 3 & 0 & 1 & -2\\
0 & 0 & 0 & 1 & -9 & -1 & -2 & 7
\end{pmatrix} \)

\(\to\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0 & 0 & 18 & 2 & 3 & -14 \\
0 & 0 & 1 & 0 & -6 & -1 & -1 & 5\\
0 & 0 & 0 & 1 & -9 & -1 & -2 & 7
\end{pmatrix} \)

よって逆行列は

\(\to\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 1\\
18 & 2 & 3 & -14 \\
-6 & -1 & -1 & 5\\
-9 & -1 & -2 & 7
\end{pmatrix} \)

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参考・引用文献

下記の資料を中心に執筆しています。
各所で引用元を記すべきですが
煩雑になるのを防ぐため
こちらでまとめて明示いたします。

書籍

  • 改訂版 大学1・2年生のためのすぐわかる数学
  • これだけ! 線形代数
  • まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数
  • 線型代数―Linear Algebra(長谷川 浩司/著)
  • 線型代数入門( 斎藤 正彦/著)

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

動画

  • 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
  • Masaki Koga [数学解説]
  • AKITOの勉強チャンネル
  • 式変形チャンネル

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

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